「ジェントルマン」

ビューティブログに載せるのは少々気がひけますが、
あまりに秀逸な結末に、心ふるえお薦めせずにはいられず・・・
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表は、完璧で才能あふれた「ジェントルマン」。裏では、悪行をくりかえす卑劣な男。
そんな「ジェントルマン」の正体に魅せられ愛してしまった主人公のゲイ男性…というストーリー。

数年前の短編「MENU」を進化させた作品だと感じながら、
山田詠美さんの美しくオリジナリティに溢れた文体に、久しぶりに読書の楽しみを堪能しました。

例えば、
「高いレベルで外見と内面のバランスを取りながらも、そこに隙というアクセサリーを付け加えるのを忘れなかった(中略)彼は、オーラの着崩しに長けていた。」

「オーラの着崩し」・・・なんて素敵な言葉でしょうか。
隙なく計算されたものは「野暮なカリスマ」。
完璧なジェントルマンとは、オーラまで着崩す術に長けている人、なんだそうです。

ただし、共感とは無縁。このジェントルマンは善悪の概念をとびこえています。
人の心を殺しても、実際に死に至らしめても、何も感じない。
人の心をみくびっているがゆえに、造作なく人を操れるという矛盾。
そこに嫌悪感を覚えるのですが・・・

「ユメ(主人公)は俺のものだもんな」と主人公の愛をもみくびりすぎたジェントルマン。
圧巻の結末、心の襞が織りなす繊細な部分を理解できなかったゆえに起こる事態に、
私は胸がすくような思いがしました。

「それ」を聞いた時、
「初めて、ぼくは、きみよりも自分を愛した。」

「友情は裏切る」でも、愛情も違う形で裏切るのです。
ジェントルマンにとっては日常にすぎなかったことであっても・・・。

単なるピカレスク小説(悪漢譚)とは一線を画した、傑作だと思います。
結末にも、あるいは嫌悪感をもよおす方がいらっしゃるとは思いますが、
決して人の心をみくびってはいけない、という警句のように響いたのは私だけでしょうか。

さらに、私には性格上とても難しいことなのですが、
まず自分が自分を一番好きであり、そして「どう」人を愛するのか、に挑戦してみたくなりました。



"The Sun Also Rises"

気持ちの良い日和ですが、私は風邪からひどい鼻炎になってしまい、
ティッシュを抱えながら寝込んでいます・・・。

そんな中、ヘミングウェイの「日はまた昇る」を再読しました。
大学時代に研究で使って以来ですから、十何年ぶり?
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第一次世界大戦に従軍して負傷し、性的不能になってしまった主人公が、
いいようのない虚無感を抱えながら、
昼間は何とかがんばるけれども、夜中は一人で苦悩する、そんな日々の物語です。

「どんなに苦しんでも、自分の苦悩にはおかまいなしに日はまた昇るのだ」
という意味の表題だと、私は解釈しています。


震災が起きた直後、眠れず見た朝日に対して、同じように思いました。
「これだけの惨状や人々の苦しみが発生しているのに、
何事もなかったかのように、日はまた昇る・・・」と。
永遠に変わらない自然のめぐり。驚きとやるせなさが同時に押し寄せました。


この本の冒頭には
旧約聖書の「日はまた昇る」の一節とともに、
"You are all a lost generation."「あなたたちはみんな失われた(迷える)世代なのよね」
(Gertrude Stein女史の言葉)が載っています。

"lost generation"とは
第一次世界大戦後、自由を満喫しているかのように「見える」生活を送りつつ、
虚無感に苛まれ「真実とは何か?」「自分は何者か?」を模索していた、世代のこと。
 *アメリカ文学史的には、1920年代に世に出た作家達のことを指します。
  私の大好きなフィッツジェラルドはヘミングウェイと並んでこの代表的作家。


「ロストジェネレーション」「日はまた昇る」

この二つを巻頭においたヘミングウェイの意図に深いものを感じました。
大学時代には頭だけで、心では真に理解していなかったと思います・・・

日本が大きな災害を乗り越えようとしている今、
本当に大切なことを再確認したり、物事の真価を見極めたり、
自分を見つめなおして、より素敵に成長できる時でもありますよね。
変わらずめぐる「日」においても、自分の内面は進歩できますもの。

美しい渓谷で自然の素晴らしさに接し、
心の傷が癒えていく主人公の姿も描かれていますが、

最後に主人公の恋人が言うセリフ
「私、性悪な女になるまいと決めたので、何だか気分がいいの。(中略)
こういう気持ちって、神様の代わりに私たちがもっているものじゃないかしら。」

人間の本能という名の「自然」も、健全&素敵なものを持っているのだと信じます
(私はまず体を健全にしなければ


「恋」〜感情の貸し借り

以前読んだ、小池真理子さんの作品に、下記のようなくだりがありました。
(すみません、睡眠不足でどの作品か失念してしまいました)

「彼には借りがある。人生を救ってくれた男である。
人の感情の貸し借りなどあり得ない、とわかりつつも、そう思ってきた。」

もちろんこれは、人の心の痛みを十分理解しながらも、
やむにやまれぬ行動に走ってしまった人の言葉だからこそ、すっと心に入るのです。

小池真理子さんの作品の主人公の多くは
何というか、心の礼儀正しい人、なんですよね。


最近、テレビ制作を少しお手伝いしていて(まだ企画段階ですが)、
いろいろな年代の女性にお会いする日々です。
どの本を読んだらいいかわからない、流行ではなく本当に価値ある本を知りたい、
という20代前半の女性がいて、
あ、これすごーくオススメだよ、と思ったのです。
主人公の、心の礼儀正しさが痛いほど伝わります。
直木賞受賞作です。
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作家さんの観念は一定していますから、
他の作品でもいいと思いますが、

これは過去振り返る額縁を持っていることもあり、
そもそもエゴの塊だったり、自らに酔ってしまいがちな恋というものが、
至極客観的な視点で描かれていて、特に好きな作品です。
ストーリー展開も面白いですし。


さて、日々痛感することです。

私は人から受けた感情の「借り」は忘れずに生きていきたい、
いつか恩返しができるように・・・、と思います。

一方「貸し」を意識したとたん、
それはメリットを期待した不純な感情となってしまいます。
そんな人間にはなりたくない、と肝に銘じます。

なぜなら、
どんなに取り繕っても、瞳の奥だけは嘘はつけないから。


心の礼儀正しさを備え、本物の美を追求して生きていきたい、と
さんざん未熟さを痛感してきた私は、そう思うのでした。




錦繍

紅葉がきれいと思ったとたん読みたくなりました。
私のおそらくベストファイブに入る小説です。

「錦繍」を辞書で調べてみると(私、国語辞書好きなんです)
“しい紅葉や花をたとえていう
△Δ襪錣靴せ句の詩文のたとえ

ちなみに、よくお手紙の時候の挨拶で使われる
「錦秋の候」の錦秋は

紅葉が錦のように色鮮やかな秋。



書簡体小説なのですが、
お手紙を書くことも少ない今の時代、
もはやクラシカルな形式という概念を通り越して、
とても新鮮に思え、それゆえ胸に迫るものがあります。

内容はただの男女の愛憎劇ではなく、
美しい文体で、正直な心のままに書かれた(という宮本輝さんの匠の技)

面々とつらなった過去がもらたす今から、未来へとはばたこうとする二人の、
心の、つまり人間そのものの「再生の物語」です。

過去に何があろうと、苦悩や反省を活かした「今」を積み重ねていけば
人はこれだけ素敵に成長するのだ、と実感できる小説。


やっぱり、この作品大好きです。

昔はあんなに感動した景色が自分にもう何の感興も抱かせなくなる、
それが歳をとることなのだと、思っていました。
でも、またその逆も多々あるのだと再認識しました。
それは良いほうにむけば、虚栄心など余計な不純物を排除した、
心の成熟がもたらす、本質的なアンチエイジングになり得るのではと。


以前、テレビ番組で、幻冬舎の見城徹さんが
「これをドラマ化したらいいよね。でも書簡体小説の良さを出し切れるか・・・」
というような事をおっしゃっていましたが、別の方が
「僕は読んだことはないけれど、
迷うことはない、ダイナミックな錦秋の景色から始めればいいじゃないか」

美しい紅葉が舞台の名作がドラマになれば
素敵ですよね



「悪人」

映画化されましたね。

吉田修一さんは男性の心理描写の卓越した方という印象が強かったのですが、
こんなにもリアルに、若い女性の心理・素朴さ・そして浅はかさを織り交ぜて
描く方だとはびっくり!といのが読み始めの感想でした。

痛いほどの孤独感も、人の心が与えたものにより、かくも悲しく変化してしまう・・・
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「悪人」って誰なんでしょう?
黒沢明監督の「藪の中」を思い出しました。
「ある事実」を見た人によってそれぞれ「真実」が異なる摩訶不思議・・・
何が本当なのか?すべては藪の中・・・
女優さんのキャラの七変化にも背筋が凍りましたもの。
ある人が見たら「悪女」、別の人がみたら「聖女」、自分で語ると「無垢な女」
う〜ん。

さて、映画化です。
妻夫木くん、どんな演技をなさるんでしょう?
以前松本清張さん作品のドラマ化で「悪役」を見事に演じていて、
ふり幅の大きい役者さんなんだぁと思っていました。

彼はただのナイスガイではないんですね。
普段はにこにこ、でも芯は強い好青年って感じなんですが・・・
役者さんってこわいですね〜

 


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